健康診断の結果に、毎年「貧血」と書かれていました。
私はその文字を、数年のあいだ見送り続けました。再検査の案内が入っていても、「いつものことだから」と封筒ごとしまっていた年もあります。
鉄分を意識して摂っているのに数値が変わらない、という方もいるのではないでしょうか。レバーやほうれん草、鉄分入りの飲料、サプリメント。頑張っているのに、毎年同じ結果が返ってくる。
この記事は、その「なぜ」について、私が後から知ったことをまとめたものです。先に結論めいたことを書くと——入ってくる鉄分の話だけでは、半分だったのです。
本記事は私の経験と個人的に調べた情報の共有であり、診断や治療を代替するものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
鉄分を「入れて」も、追いつかないことがある
お風呂にお湯を張るところを想像してみてください。
蛇口からお湯を出しているのに、いつまでも溜まらない。そういうとき、蛇口の勢いを強くする前に、確認したい場所がありますよね。栓です。
鉄分の補給は、蛇口の側の話です。食事やサプリで「入れる」ことはできます。でも、出ていく量が多いままだと、入れても入れても追いつかない——私の体で起きていたのは、そういうことでした。
女性の貧血で見落とされやすい「出ていく原因」——月経過多
月経のある女性の鉄欠乏では、月経の出血量が多いこと(月経過多)が主要な原因の一つとされています。
ここで難しいのは、自分の月経量が「多い」かどうか、自分ではわからないことです。人と比べる機会がないからです。
「これくらい普通」が、判断を遅らせた
私の場合、夜用ナプキンを昼間も使うのが当たり前になっていました。レバーのような塊が出ることも、「生理なんてこんなもの」だと思っていました。そのあたりのことは、生理のたびに血塊が出ていた、あの頃のことに詳しく書いています。
階段で息が切れるのも、加齢のせいだと思っていました。毎年の「貧血」の文字と、毎月の出血量を、私は長いあいだ結びつけて考えたことがなかったのです。
月経過多の裏に、病気が隠れていることもあります
私の月経過多の原因は、子宮筋腫と子宮腺筋症でした。月経過多の背景には、子宮筋腫や子宮腺筋症といった病気が隠れていることがあります。病気の側の話は、子宮腺筋症と子宮内膜症の違いにまとめてあります。
数値は「正常」なのにだるい——貯蔵鉄(フェリチン)のこと
もう一つ、後から知って驚いたことがあります。
体の鉄には、血液中で働いている分とは別に、「貯金」にあたる分(貯蔵鉄・フェリチン)があるそうです。健康診断のヘモグロビン値が基準内でも、この貯金が先に減っている状態——いわゆる「隠れ貧血」と呼ばれる状態があると知りました。
「数値は大丈夫と言われたけれど、なんだかずっとだるい」という方は、フェリチンという言葉を覚えておくと、医師に相談するときの手がかりになるかもしれません。
体からのサインは、意外な形で出る——私の場合は氷でした
30代の私は、夏も冬も、毎日氷をかじっていました。
氷を無性に食べたくなる「氷食症」は、鉄欠乏で見られることがある症状の一つだと、ずっと後になって知りました。当時の私は、ただの癖だと思っていました。この話は30代、毎日氷を食べていた——氷食症が気づいたら治っていた話に書いています。
だるさ、息切れ、氷。バラバラに見えていたものが、後から振り返ると一本の線でつながっていました。
どこに相談するか——内科と婦人科、入口は2つ
貧血そのものを調べてもらうなら内科、月経量のことが気になるなら婦人科——入口は2つあります。
私のおすすめというより、私の反省から言えるのは、健康診断で貧血を指摘されていて、かつ月経量に心当たりがあるなら、婦人科も選択肢に入れてほしいということです。私は「貧血は貧血、生理は生理」と別の引き出しに入れたまま、10年が経っていました。
婦人科の受診そのものに足がすくむ方は、婦人科が怖くて、38歳で一度帰ってきた話も読んでいただけたら嬉しいです。私も、一度は受付から帰った人間です。
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私は対面の婦人科に通い続けていますが、「まず話だけでもしてみたい」という方の選択肢として知っておいて損はないと思います。
私の場合——「出口」の治療を始めたら、氷をかじらなくなった
私は子宮腺筋症の治療として低用量ピル(フリウェル)を飲み始めました。月経量が減ることで、貧血の改善が期待できる場合がある、という説明を受けました。
飲み始めて2年近く経ったある日、ふと気づきました。グラスに氷を入れなくなっていたのです。誰かに治してもらったというより、「出ていく原因」が落ち着いたら、体が勝手に変わっていた——そんな感覚でした。
鉄剤や食事の工夫が無意味だと言いたいのではありません。補給は補給で大切な治療です。ただ、補給だけで追いつかないときには、出口の側に原因が隠れていないかを、誰かに診てもらう選択肢がある——それを、あの頃の私に教えてあげたいのです。
まとめ
- 鉄分を摂っても貧血が改善しないとき、「出ていく原因」が隠れている場合があります
- 月経のある女性では、月経過多が鉄欠乏の主要な原因の一つです
- 月経量が「多いかどうか」は自分では判断しにくいもの。夜用ナプキンが日常になっている・塊が出る、などに心当たりがあれば、婦人科に相談する選択肢があります
- ヘモグロビンが正常でも貯蔵鉄が減っている「隠れ貧血」という状態もあるそうです
健康診断の「貧血」の二文字を、今年も見送ろうとしている方へ。私はそれを何年も続けて、遠回りをしました。この記事が、どなたかの引き出しを一つ開けるきっかけになれば幸いです。


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