症状がないのに、なぜ生活を変えたのか
胸やけも、のどの違和感も、私にはありませんでした。
それなのに、健診の胃カメラで「バレット食道」と言われた——その話は別の記事に書きました。去年は「逆流性食道炎の傾向」と言われていたものが、一年で進んでいた。自覚がないまま、です。
知ったあと、しばらくは「症状がないのに、何をどうすればいいんだろう」と思っていました。痛みがあれば、それを和らげようと動けます。でも私の場合は、和らげる症状そのものがない。
それでも、できることはあるはずだと思いました。逆流そのものを減らせれば、これ以上進みにくくなるかもしれない。「治す」ではなく、「これ以上を防ぐ」ための生活——そういう向き合い方なら、症状がない私にもできる。
この記事は、私がそう考えて見直した、毎日のささやかなことの記録です。専門的な治療の話ではなく、暮らしの中で私が変えてみたことを並べただけのものです。同じように「症状はないけれど、何か気になっている」という方に、ひとつの参考として届けばと思います。
そもそも、なぜ胃酸は逆流するのか
生活を見直す前に、私はまず「どうして逆流が起きるのか」を自分なりに調べました。仕組みがわかると、何を気をつければいいかが見えてくる気がしたからです。
胃と食道のつなぎ目には、下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という、弁のような役目をする筋肉があるそうです。普段はここがきゅっと締まっていて、胃に入ったものが食道へ戻らないようにしている、と説明されていました。
この筋肉がゆるんだり、お腹の中の圧(腹圧)が高まったりすると、胃酸が食道のほうへ上がりやすくなる、とされています。
そして、その逆流が長く繰り返されると、食道の下のほうの粘膜が、胃や腸に似た粘膜に置き換わった状態になることがある——これがバレット食道と呼ばれるものだと知りました。
とはいえ、逆流があるからといって、誰もがこうなるわけではないそうです。私の場合はたまたま指摘を受けた、ということなのだと思います。だからこの記事も、「こわがらせるため」ではなく、「気づいたから、できることをしておこう」という気持ちで書いています。
つまり私にとっての「できること」は、このゆるみと腹圧、そして逆流の回数を、暮らしの中で少しでも減らすこと。そう整理すると、やることがはっきりしてきました。
食事——何を、どれだけ、いつ食べるか
調べていくと、食べ物や食べ方が逆流に関わってくる、という話によく出会いました。
一般に控えめにするとよいとされていたのは、脂っこいもの、食べ過ぎ、アルコール、カフェイン、炭酸、チョコレート、それから酸味や香辛料の強いものなどでした。脂っこいものや食べ過ぎは、胃にとどまる時間が長くなって、あの弁のような筋肉もゆるみやすい、と説明されているそうです。
ただ、これは「食べてはいけないもの」のリストではないのだと思います。食べ物の影響は人によってずいぶん違うようで、平気な人もいれば、これを食べると決まって調子が悪い、という人もいる。だから私は「禁止」と考えるのではなく、「自分にとってどうかな」と様子を見ながら、量をすこし控えるくらいの気持ちでいます。
そのなかで、私が比較的はっきり意識するようにしたのは、食べ方とタイミングでした。
- 食べたあと、すぐに横にならない(だいたい2〜3時間はあけるようにしています)
- 寝る前の食事を、なるべく控える
このふたつは、私の生活の中でいちばん変えやすかったところです。夜遅くに食べてすぐ横になる——振り返ると、これまでの私がいちばんやりがちだったことでした。
ちなみに私は、ピルを飲んでいることもあって、以前から食事のことは少し気にしてきました。ただそれは血のめぐりや体重を意識した話で、今回の逆流とは仕組みがまったく別ものです。そのときに始めたことはこちらの記事に書いていますが、目的が違うので、混ぜずに分けて考えています。
姿勢と腹圧——猫背、前かがみ、締めつけ
実は、検査のあとに私がいちばん引っかかったのは、姿勢のことでした。
胃カメラの結果を聞いたとき、先生から「スマホ」「猫背」という言葉が出たのです(このときのやりとりも母15の記事に書きました)。そのときはよく意味がのみ込めなかったのですが、あとから腹圧の話を知って、ああ、そういうことかと腑に落ちました。
前かがみの姿勢や猫背、お腹を締めつけるような服装は、お腹の中の圧が高まることに関係する要因のひとつだとされています。スマホを見るときの、背中を丸めて下をのぞき込む姿勢も、その仲間なのだろうと思います。
もちろん、姿勢だけが原因だと言いきれるものではないのでしょう。ただ私の暮らしを振り返ると、思い当たることばかりでした。台所で前かがみになっている時間、ソファで丸まってスマホを見ている時間。
それからは、できるときだけでも背筋を伸ばすように、スマホは少し顔の高さに近づけて見るように、と心がけるようになりました。きついベルトやウエストの服も、長く着る日は避けるようになりました。たいしたことではないのですが、「気づいたら直す」を続けています。
寝るときの、ちょっとした工夫
横になっている時間は長いので、寝るときのことも調べました。
私が試しているのは、上半身をゆるやかに高くして寝ることです。枕で頭だけを持ち上げるのではなく、上半身全体をなだらかに傾けるようにする、という方法が紹介されていました。胃酸が上がってきにくいように、という考え方だそうです。
寝る向きについても、いろいろな話を見かけました。左を下にすると逆流が少ないという報告もあるようですが、これは個人差があって、はっきり「こうすればいい」と言えるものではないようです。私自身も、まだ「自分に合う向き」を探っている途中です。なので、向きについては「そういう話もあるんだな」くらいに受け止めて、無理に固定はしていません。
寝方は、お金もかからず、今夜からでも試せるところ。合う・合わないを、自分の体で確かめながらでいいのだと思っています。
そのほか、生活の中で気にかけていること
ここまでのほかにも、逆流に関わるとされる要因はいくつかありました。
体重(お腹まわりが増えると腹圧が高まりやすい、とされています)、たばこ、お酒、カフェイン——どれも、よく名前が挙がっていました。
私はこのあたりを、ひとつずつ完璧に、とは考えていません。ただ「関係するとされているんだな」と頭の片隅に置いておくだけでも、日々のちょっとした選択が変わってくる気がしています。今日は揚げ物をやめておこうかな、コーヒーは一杯にしておこうかな、という小さな積み重ねです。
「治す」より、「付き合っていく」ということ
ここまで書いてきて、いちばん大事だと思っていることを、最後に。
バレット食道は、一度なると元の粘膜に戻すのは難しいとされているそうです。だから私は、生活を見直すことを「治すため」とは考えていません。あくまで、逆流をすこしでも減らして、これ以上の進行を抑える・経過を見守っていくための工夫だと思っています。
そして——これはどうしても書いておきたいのですが、こうした生活の工夫は、受診や検査、そして必要なときのお薬の代わりにはなりません。私自身、定期的に内視鏡で経過を見てもらうことを、いちばんの土台に置いています。
バレット食道から食道がんに進む確率は、一般的には高い数字ではないとされています。ゼロではありませんが、過度に恐れるような数字でもない、と。だからこそ、こわがって目をそらすのではなく、定期的に検査で見てもらいながら付き合っていく——それが、私にとっていちばん落ち着いていられる向き合い方でした。
気になることが出てきたら、そのときは次の受診で主治医に聞いてみる。私はそれくらいの距離感で、この体と付き合っています。
※この記事は、検査で指摘を受けた一個人の体験と、一般的な情報の共有です。診断や治療を代替するものではありません。症状がある方や、検査結果の受け止め方に迷う方は、医療機関にご相談ください。
完璧でなくていい。私が続けていること
並べてみると、どれもごく当たり前の、小さなことばかりです。食べてすぐ横にならない。背筋を少し伸ばす。寝るとき、上半身をゆるく高くする。
全部をきっちりやろうとすると、たぶん続きません。私も、できる日とできない日があります。それでも、症状がないうちに気づけたことを、私はわりと幸運だったと思っています。痛くなってからではなく、今から少しずつ整えていける——そう思えるだけで、気持ちが落ち着きました。
同じように「症状はないけれど、何か言われた」という方が、この記事を読んで、ひとつでも「これならできそう」と思えるものを見つけてくれたら、うれしいです。
そして、自分の体のことを気にかけはじめたあなたへ。私がたどってきた婦人科や健診の道のりは、こちらにまとめています。自分の体と向き合うなかで書いた、ピロリ菌のことや、貧血と鉄のことも、よかったら。
この記事について:この記事は、運営者(万樹)自身の受診や治療の体験と、自分なりに調べた内容をもとに書いています。専門家が内容を保証しているわけではありません。症状や治療のご判断は、体質や状況によって一人ひとり違います。気になることは、必ず主治医や専門医にご相談ください。


コメント