発達障害の子どもの思春期の特徴——「葛藤」「イライラ」が成長のサインである理由

「最近、うちの子が変わってきた気がする。」

そう感じている親御さんに向けて書きます。

イライラが増えた。言い返してくるようになった。前は素直だったのに、急に黙るようになった——。子どもの変化に戸惑いながら、「何かまずいことが起きているのか」と不安を抱えているかもしれません。

でも、その変化のいくつかは、成長のサインかもしれません。

発達障害のある子どもの思春期には、定型発達の子とは少し異なる難しさがあります。ただ同時に、思春期は「自分」という存在への理解が深まる、豊かな変化の時期でもあります。この記事では、思春期に起きやすい変化とその理由、そして親としてできることを整理します。

発達障害の子どもの思春期はいつごろ始まるか

思春期には、大きく分けて二つの変化があります。ひとつは身体的な変化(ホルモン分泌・体格の変化)、もうひとつは心理的・行動的な変化です。

身体的な変化の時期は、発達障害の有無にかかわらず、おおむね10〜12歳前後から始まります。

一方、心理的・行動的な変化は個人差が大きく、発達障害のある子は特に「ずれ」が生じやすいと言われています。周囲が気づき始める10歳前後よりも早く変化が現れる子もいれば、中学に入ってから急に変化する子もいます。

「小学校高学年になってから、なんとなく関わりにくくなった」と感じているなら、それが思春期のサインかもしれません。

思春期に起きやすい変化——特性別の傾向

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

ASDの特性を持つ子は、思春期に次のような変化が現れやすいです。

変化への敏感さが増す
これまで大丈夫だったルーティンが崩れやすくなる。急な予定変更への反応が強くなる。「なぜか最近、些細なことで崩れる」という場合、ホルモン変化が感情調節に影響している可能性があります。

感覚過敏が変化する
思春期のホルモン変化により、感覚の受け取り方が変わることがあります。以前は平気だった音や触感に突然反応するようになったり、逆に感覚が鈍くなることもあります。「この子、最近また感覚が過敏になってきた」という変化は、発達の停滞ではなく、身体の成熟に伴う変化です。

本音と建前の葛藤が始まる
「こう言いたい」という本音と、「こう言ったほうがいい」という建前の差を意識し始める時期です。

ADHD・その他の場合

衝動性や感情の波が大きくなりやすく、自己評価が激しく揺れる時期です。「怒ったり、落ち込んだりの波が短い間隔で来る」「自分のことを急に嫌いになる」といった変化は、ADHDの特性とホルモン変化が重なった結果として現れやすいです。

「なぜ自分は支援学級なの?」——自己認識の芽生え

小学校高学年から中学入学前後にかけて、多くの子が「自分と周囲の違い」に気づき始めます。

「なんで私だけ別のクラスなの?」「みんながわかることが、なぜ自分にはわからないの?」

これは、子どもの自己認識が発達してきた証です。怖いことではありません。ただ、この気づきが孤独な形で深まらないよう、親と一緒に、自分の特性を言葉にしていく機会にしてあげることが大切です。なお、支援学級と中学進学の内申点問題については別記事でまとめています。

「本音と建前」が生まれる——それは成長のサイン

思春期に入ると、多くの子が「本音と建前」を使い分けることを覚え始めます。

「本当は嫌だけど、友達の前では平気なふりをする」「言いたいことがあるけど、言わない方がいいと判断する」——こうした場面が増えてくるのは、社会の中で自分の立ち位置を調整しようとしている証です。

発達障害のある子は、こうした「本音と建前の使い分け」が定型発達の子より難しいことがあります。だからこそ、それができるようになってきた段階では、その葛藤はより強く出やすい。イライラや「わかってもらえない」という感情として表れることが多いのは、それだけ内側で必死に頑張っているからです。

葛藤は成長のサイン。建前を使えるようになってきたということは、社会で頑張ろうとしている証です。

ただし、一点だけ注意が必要です。葛藤が大きくなりすぎると、次節で触れる「二次障害」につながることがあります。「成長の証」として見守りながら、子どもの「いつもと違う」サインも同時に拾い続けてください。

思春期に多い困りごと

SOSを出せない

思春期の子どもがSOSを出せない理由は、「プライドがあるから」だけではありません。よく聞かれる理由として、次の三つが挙げられます。

  • 自分が困っていると気づいていない(感情の認識が難しい)
  • 困っていることを言葉にする方法がわからない
  • 「言っても変わらない」という経験から学習している(学習性無力感)

「この子、なんで言ってくれないんだろう」と思ったとき、「言えないのではなく、言い方がわからないのかもしれない」「そもそも自分が困っていることに気づいていないのかもしれない」という視点を持つと、関わり方が変わります。

友人関係が複雑になる

思春期の友人関係は「空気を読む」「グループの雰囲気に合わせる」といった、発達障害のある子が特に難しさを感じやすい要素が増えます。「一緒にいるのにうまくいかない」「友達が急に離れた気がする」という変化は、子どもが社会性の新しい壁にぶつかっているサインです。

学校・集団場面でのストレスが増える

授業の内容が抽象的になり、集団の人間関係が複雑になる。学校にいる時間の「消耗度」が上がりやすい時期です。帰宅後に崩れやすくなる子は、学校で相当に頑張っている可能性があります。

自己理解と自己否定が揺れる

「自分はなぜうまくできないのか」という自己否定と、「自分なりにできることがある」という自己理解が交互に揺れる時期です。

この揺れが激しくなると、二次障害(不安障害・うつ・不登校など)につながることがあります。

次のような状態が2週間以上続く場合は、専門家への相談を検討してください。

  • 食欲や睡眠の大きな変化
  • 以前は行きたかった場所に行けなくなった
  • 自分を傷つけるような言動
  • 「消えたい」などの発言

リストに当てはまるものがあっても、すぐに深刻に考えすぎないでください。まず専門家に相談する、それだけでいいです。

二次障害は、早めに相談するほど対処の選択肢が広がります。「様子を見よう」と抱え込まず、まず学校の養護教諭やスクールカウンセラーに声をかけてください。

親ができること——「受け止める」と「一緒に楽しむ」

本音を受け取れる入口をつくる
「最近どう?」という直接的な問いかけより、「今日なんかあった?」「あれ、そういえばあの話どうなった?」という、関係の延長線にある問いかけが届きやすいです。子どもが話し始めたとき、まず否定しない。アドバイスより先に、「そうか」と受け取る。それだけで、子どもの安心感は変わります。

「いつもと違う」の積み重ねで察知する
思春期の子どもは、SOSを言葉で出すことが難しい。だからこそ、「いつもより口数が少ない」「いつもなら笑う場面で笑わない」という小さな変化を拾い続けることが大切です。「いつもと違う」が積み重なったとき、静かに話せる空気をつくってみてください。

興味に乗っかる関わり方
「困りごとの解決」ではなく、「楽しいを共有する」時間をつくることが、思春期の安心感の土台になります。子どもが好きなもの、熱中しているものに一緒に乗っかってみてください。解決しようとしなくていい。ただ、一緒にいる。それが、自分で決める力の根っこになります。

実際に息子が「中学は普通級に行く」と自分で決めた話は、体験記に書きました

専門家・相談先

相談支援専門員
福祉的な支援の計画を一緒に考えてくれる専門家です。思春期以降は、生活支援だけでなく進路・就労準備・移行支援という視点が加わります。「今まで通りの相談でいい」と思わず、「これからどんな支援が必要か」を一緒に見直す機会を持てると理想的です。

スクールカウンセラー(SC)
子ども本人の気持ちの相談、保護者のメンタル面の相談ができます。子ども自身が「話したい」と言えれば、直接面談も可能です。

スクールソーシャルワーカー(SSW)
学校・家庭・福祉機関をつなぐ役割を担います。困りごとが複合的になってきたときの入口として機能します。

養護教諭(保健室の先生)
学校の中で最初にSOSを受け取ることが多い存在です。「なんとなく保健室に来る」子を温かく受け止めてくれる養護教諭との関係は、子どもの安全網になります。

放課後等デイサービス
高校生まで利用できますが、中学生以降に対応している事業所は地域によって大幅に減ります。小学校在籍中から中学以降の事業所を確認しておくことをおすすめします。

相談窓口について詳しくはこちら放課後等デイサービスの選び方はこちら


まとめ

思春期は、発達障害のある子にとって「変化が多くて大変な時期」です。でも同時に、「自分」という存在をより深く理解し始める、とても豊かな時期でもあります。

葛藤しているのは、頑張っている証。イライラするのは、社会の中で自分の立ち位置を探っている証。

子どもは、親が見ていないところで、確かに成長しています。

変化に戸惑ったとき、「何かまずいことが起きている」と一人で抱え込まないでください。相談できる場所は、思っているよりたくさんあります。そして——変化している子どもを、信じてあげてください。

その変化は、きっと意味のあるものです。

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