出発の朝、息子は5時台に自分で起きてきた。
小言を言う必要はなかった。促す必要もなかった。リュックを背負って、ガラガラを引いて、「行こう」という顔をして立っていた。
——3年前には、想像もできなかったことだ。
GWに旅をするようになった理由——最初の旅は、失敗だった
うちが毎年旅行をするようになったのは、一昨年の夏からです。
きっかけは単純で、「息子が小学生のうちに、色々な場所を見せてあげたい」という気持ちでした。子ども料金が使えるのは12歳まで。乗り物も宿も、今が一番お得に動ける時期です。
最初の旅先は北陸にしました。金沢・富山・敦賀。夏休みに行ったのは、「北陸は涼しいイメージがある」から。暑さ対策さえすれば問題ないだろうと思っていました。
でも、旅の最終日に息子が発熱しました。
原因は一つとは言えません。慣れない行程による疲れもあったと思います。ただ、「気候も関係しているのかもしれない」とも感じました。北陸の夏は、私のイメージよりずっと蒸し暑かった。
翌年から、GWに変えました。
昨今の酷暑で、夏に公共交通機関を使った長距離旅行をすることが、うちには難しいと判断しました。駅のホームの照り返し、乗り換えの移動、混雑した車内——暑さの中でこれらが重なると、息子への負担が大きすぎる。GWなら気候が安定しています。そして子ども料金が使えるうちに、できるだけ多くの経験を積ませたいという気持ちは変わらないから、毎年続けることにしました。
3年間の記録
| 年 | 時期 | 行き先 |
|---|---|---|
| 一昨年 | 夏休み | 北陸(金沢・富山・敦賀) |
| 去年 | GW | 関西(大阪・京都) |
| 今年 | GW | 四国・九州(高知・愛媛・大分・福岡) |
去年は体調不良なし。そして今年——出発の2日前に、息子が37.5℃の発熱をしました。前日には36.8℃まで下がりましたが、体温は高め。毎年何かある。体調管理はまだまだ課題です。
それでも旅に出ました。息子がずっと楽しみにしていたこともあります。ただし、「旅先で熱が上がったらすぐ予定を変える」と約束をして出発しました。無理をさせるための旅ではないので。
乗り物を全部試してわかったこと
今年の四国・九州の旅では、新幹線・特急・フェリー・飛行機と、ほぼすべての乗り物を使いました。結果としてわかったことがあります。
陸路・海路は問題ない。飛行機は苦手だった。
車・普通列車・特急・新幹線・フェリー——どれも酔いませんでした。フェリーでは初めて乗る船の中を探索して、デッキから景色を楽しんでいました。
ところが飛行機では、離着陸の時間に強い不快感が出ました。
楽しみにしていたはずなのに、様子がおかしかった。最初は「安全ルールへの理解が追いついていない」と思いました。でも帰ってから考えると、少し違う気がしています。
車もフェリーも、ある程度自由に動けます。でも飛行機の離着陸中は、シートベルトを締めたまま動くことができない。「密室の中で、自分の身体を自由にできない時間」が続くことが、息子には難しかったのかもしれません。
次に飛行機を使う時は、事前に「どんな時間がどのくらい続くか」を絵や言葉で見せてから乗ろうと思っています。
去年と違った、息子の姿
今年の旅で一番印象に残ったのは、息子が「変わっていた」ことです。
朝の支度を、自分でやった。
出発の朝は6時半に東京駅を出る新幹線に乗るため、5時台には最寄り駅を出なければなりませんでした。それでも息子は自分で起きて、自分でリュックを背負って、グズることなく準備しました。私が声を荒げる場面は一度もありませんでした。
待つことができた。
四国での移動はほぼ特急列車でした。自由席だったので、早めに並ぶ必要がある。接続が悪くて1時間近く駅で待機することもありました。「接続が悪いから待つことになる」と事前に伝えておいたら、文句を言わずに待てました。事前に説明があれば、待てる。それがわかりました。
思いやりが増えていた。
大浴場のあるホテルに泊まりました。以前はタオルも着替えもビショビショにしていたのに、今回は最低限の濡れものでした。ガラガラを「持つよ」と言ってくれる場面もありました。私が地図アプリを見ながら道を間違えても、怒らずに黙ってついてきてくれました。
あらゆる場面で、私が注意することが減っていました。
息子の体力がついたことも大きいと感じています。毎朝20分のマラソンがある学校で、先生方が一緒に走ってくれているそうです。その積み重ねが、5泊6日の移動を乗り切る体力と忍耐力につながっていると思います。学校に、感謝しています。
体調管理は、まだ課題
正直に書きます。出発2日前に息子が発熱した時、イライラしました。
衛生管理への意識が、まだ甘い。手洗い・うがい・睡眠——わかっているのにできないことが続くと、「また同じことを言わなければならないのか」という疲れが出ます。
でも前日には熱が下がって、旅に出ました。
一昨年は最終日に発熱した。去年は体調を崩さなかった。今年は出発前に発熱して、でも旅の間は持ちこたえた。少しずつ、何かが変わっているのかもしれません。体調管理は引き続き課題です。でも、これも旅をしているからこそ見えてくることだと思っています。
次の旅に向けて——学んだ二つのこと
3年間の旅を通じて、来年に向けて試してみたいことが二つあります。
一つ目は、飛行機に乗る前の事前準備。
どんな手順でどんな時間が続くかを、事前に絵や文章で一緒に確認してから乗ってみようと思います。「このくらいの時間が経ったら自由になれる」という見通しを持てるかどうかが、反応を変えるかもしれません。
二つ目は、「行きたい場所リスト」を旅の前に作ること。
今年は息子が行きたい場所を前日に言うため、移動が膨大になってしまいました。息子にとっては「電車に乗れたから満足」だったのですが、私の体力的にはギリギリでした。旅の前に一緒にリストを作って、「全部は行けないけど、この中から選んでいこう」という形にすれば、少し整理できるかもしれません。
3年続けてわかったこと——旅は、成長の採点場になる
発達障害の子どもを持つ親の多くが、「うちの子と旅行できるだろうか」と迷うと思います。
私もそうでした。最初の旅は失敗で、終わり方は発熱でした。それでも翌年また行ったのは、「行ってみなければわからない」という気持ちがあったからです。
旅に出ると、日常では気づかないことが見えます。
どの乗り物が合うか。どんな場面で崩れるか。事前に説明すれば待てるのか。疲れの限界はどのくらいか。
そして何より——息子が「去年とどう違うか」が、旅の中ではっきりわかります。
今年、息子は5時台に自分で起きてきました。ガラガラを持とうとしてくれました。道に迷っても、怒りませんでした。
日常の中にいると、成長はゆっくりすぎて気づきにくい。でも旅は、その変化を一度に見せてくれます。
失敗しながら、学びながら、また来年も旅に出ようと思っています。


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