「お前にはやらないけどな」——生意気になった息子の、いちばん優しい横顔

連絡帳にも、先生からの報告にも出てこない。日常のふとした瞬間に、息子の「別の顔」が見えることがあります。あんなに、口は生意気になったのに——。

小6の息子と暮らしていて、この頃よく思うことがあります。今日は、反抗ばかりに見えるこの子が、ふとした場面で見せた優しさの話を、書き留めておきたいと思います。

口は、すっかり生意気になった

息子は今、小学6年生。思春期の入口にいます。

去年のいつ頃からか、口ぶりがすっかりとげとげしくなりました。宿題を前にするとイライラが募って、私に向かって軽口が——いえ、正直に言えば、なかなかの「ディス」が飛んでくる日もあります。親としては、カチンとくる日もあります。

思春期の子に「葛藤」や「イライラ」が増えるのは、成長のサインでもあるらしい、と後から知りました。外ではきちんとしているのに家では別人で戸惑うことも、この頃はよくあります。ただ、渦中にいる私は、しばらく態度のとげとげしさのほうばかりを見ていました。

芋掘りで、文句を言いながら誰より働いた

先日、放課後等デイサービスの野外イベントで、芋掘りに行った日のことです。

息子は、虫が得意ではありません。当日も「実は虫、嫌いかも」とぶつくさ言い、送り出す私にも軽口を叩いていきました。正直、あまり乗り気には見えませんでした。

ところが、後で聞いた話は違いました。文句を言いながらも、大きくなった体を活かして、誰よりも積極的に土を掘っていたそうです。豊作だったじゃがいもを、畑から通路のほうへ運ぶ役まで、自分から引き受けていた、と。

口は「嫌だ」、手は誰より動く。このちぐはぐが、最近の息子だなと思いました。

「お前にはやらないけどな」

もう一つ、放デイでの話です。

風船バレーでチームのリーダーを任された日、息子は小さい子が風船を取りやすいように、そっと回してあげていたそうです。「みんなが楽しめるように」と考えて。先生がそれをうれしそうに話してくださって、私は思わず「へえ、すごいね」と、感動して相槌を打っていました。

すると、その話を聞きつけた本人が会話に割り込んできて、こう言い放ったのです。

「……お前にはやらないけどな」

それだけ言って、ぷいと会話を終わらせてしまいました。

優しさを親の前で語られるのが、よほど気恥ずかしかったのでしょう。悪態の内側に、照れが透けて見えました。年下の子をなだめる側に回るようになったことは、以前から先生に教わっていました。あの「お前にはやらないけどな」は、そのお兄さんぶりを見られた恥ずかしさの、裏返しだったのだと思います。

電車で見た、誰にも見せない優しさ

いちばん胸に残ったのは、二人で出かけた帰りの電車でした。

正面に、3歳くらいの男の子が座っていました。手に持ったおもちゃで、一人「いないいないばぁ」をして遊んでいます。すると息子が、さりげなく反応してあげているのです。その子が今度は指で鉄砲を撃つ真似をすると、息子は「撃たれた」ふりまでしてみせました。

驚いたのは、それを私にアピールするでもなく、静かにやっていたことです。「見て、優しいでしょ」も「褒めて」もない。ただ、目の前の小さな子のために、自然に。

誰かに認められるためではなく、誇示もせずに、人に優しくする。勝ち負けや誇示ではないところで人を認められた息子の姿を少し前にも見ましたが、あの延長線上に、この横顔があるように思えました。

反抗は、優しさを包む皮だったのかもしれない

態度と中身は、どうやら別々に動くようです。

口が生意気になったことと、手が優しくなったこと。この二つは、同じ時期に、同時に進んでいました。私はつい、とげのある言葉のほうに気を取られてしまいますが、その奥では、人にそっと手を差し出せる子に育っていたのです。

「お前にはやらないけどな」も、芋掘りの軽口も、たぶん、優しさや頑張りを見られた照れの表れなのだと思います。生意気になったことと、優しくなったこと。この二つは、切り離せない。二つで一組の、この子の思春期なのかもしれません。

だからこの頃は、とげのある口にいちいち傷つくより、行動のほうをそっと見ておくようにしています。腹の立つ物言いの奥で、確かに、優しくなっているのだから。

おわりに

生意気な口も、年下の子にそっと差し出す手も、どちらも本当の息子です。

反抗という皮の下で、何かが育っている。その途中を、今、隣で見せてもらっている——そんな気持ちで、この夏を過ごしています。


この記事について:この記事は、運営者(万樹)が発達障害のある子どもを育てるなかでの実体験と、自分なりに調べた内容をもとに書いています。制度の運用や支援の要否には地域差・個人差があります。具体的なご判断は、お住まいの自治体の窓口や専門機関にご確認ください。

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