「個別の指導計画」とは——入学当初は「なにそれ?」だった私が、6年かけてわかったこと

支援学級や通級の説明の中で、「個別の指導計画」という言葉を耳にすることがあります。

正直に言うと、息子が小学校に入ったばかりの頃、私はこの言葉を、誰に聞いても「なにそれ?」という状態でした。制度としてはあるはずのものが、なかなか見えてこない。

6年かけて、少しずつ分かってきたことを、経験者の一人としてまとめてみます。

個別の指導計画とは——「その子の指導の設計図」

ひとことで言うと、その子のための「指導の設計図」です。

私なりに、いちばんしっくりきている捉え方はこうです。出発点にあるのは、「こんなふうに育ってほしい」という願い。たとえば、「自分で手順を考えて動けるようになってほしい」。そこから、そのために今どこでつまずいているのかを、先生と一緒に見つけて、共通の認識にしていきます。そして、その一歩を小さな段階——スモールステップに分けて、学校と家庭が、それぞれ何をフォローしていくかを決めていく。作って終わりではなく、「今どこまで来たか」を確かめ合いながら、見直していきます。

親が「伸ばすべき力」を言い当てる、というものではありませんでした。私にできるのは、「こんなふうになってほしい」という願いを持ち込むこと。そこから先生と一緒に、課題とステップに翻訳していく——そういう、足並みをそろえるための計画だと、私は受け取っています。

学期や年度の区切りで見直されていきます。作るのは学校で、担任の先生と、特別支援教育コーディネーターと呼ばれる先生が中心になって、まとめられます。

こうした計画は、支援学級・通級指導教室・特別支援学校で作られます(通級について詳しくは通級指導教室とはにまとめました)。

「個別の教育支援計画」との違い

ここが、私が一番ややこしいと感じたところです。よく似た名前で「個別の教育支援計画」というものが、別にあります。

大まかに整理すると、こういう違いでした。

個別の指導計画個別の教育支援計画
主眼学校での日々の指導(どう教えるか)医療・福祉・家庭など関係機関と連携した支援(どうつなぐか)
期間その学年・学期の短中期就学前から卒業後まで見据えた長期

さらに、進学や就労のときに引き継ぐために使う「移行支援計画」という呼び方もあります。これは教育支援計画を引き継ぎの場面で使うもの、くらいに思っておけば、私には十分でした。

名前の似た書類でつまずくのは、たぶん私だけではないと思います。「診断書」と「意見書」の違いにも、同じように戸惑いました(「診断書」と「意見書」は別物でした精神手帳の診断書のこと)。

制度としては「あるはず」。でも、実際に回してくれる人は多くなかった

調べてみて分かったのは、この計画には、作成の決まりに違いがあるということでした。

支援学級や通級を受けている場合は、個別の指導計画は全員に作られることになっています。一方で、通常の学級に在籍している場合は、「作るように努める」——いわば努力義務、という位置づけなのだそうです。

ただ、正直に書いておきたいのは、決まりがあることと、実際に手をかけて作り、共有してくれることは、また別だった、ということです。

わが家の6年をふり返っても、きちんと計画を立てて、それを回してくれた先生は、そう多くはありませんでした。低学年の頃は、なかなか出てきませんでした。途中で一度だけ手渡されたことがあり、あとは話題にのぼった記憶もありません。高学年になって、ようやく、きちんと共有と説明をしてもらえるようになりました。決まりの上では「あるはず」でも、私の手元に届いたのは、数えるほどだったのです。

放課後等デイサービスにも、似た計画があります。ただし、放デイで作られるのは「個別支援計画」という書類で、学校の「個別の指導計画」とは別のものです。作る人も、根拠になる制度も違います。こちらは半年ごとに見直しの面談があり、そのたびに内容を共有してもらえました。

今の担任の先生は、面談も、計画の作成も、そのあとのフィードバックも、しっかりしてくださっています。だからこそ思うのは、こうして計画を立てて実行してくれる先生に出会えることは、思っているよりありがたいことなのだ、ということです。決まりがあるかどうかより、その差のほうが、親にとっては大きく感じられました。

保護者は、どう関われるか

手元に来ないなら、どうすればいいのか。私がたどり着いた答えは、シンプルでした。「見せてください」と言っていい、ということです。

説明を求めてもいいし、こうしてほしいという希望を伝えてもいい。調べてみると、これは制度の趣旨からしても、おかしなお願いではありませんでした。

実際、いまの担任の先生になってからは、面談のたびに計画を見せてもらい、説明を受け、「ここはこうしてほしい」という希望も伝えられるようになりました。計画は作って終わりではなく、学期や年度ごとに見直されていくものです。一度きりで決まってしまうわけではないと分かって、少し気持ちが軽くなりました。関われる余地は、思っていたよりあったのです。

息子は来年、中学に上がります。次の入学後の面談でも、個別の指導計画を一緒に確認しておきたいと思っています。どんな目標を立てるのか、そのためにどんな配慮や手立てをしてもらえるのか、通常級との交流はどう組んでいくのか。そうした、その子の学びを支える中身を、口約束ではなく計画に書いておいてもらえると、あとで先生とも私とも「どういう話だったか」を確かめ合えます。今こうして関われている経験があるから、そう思えるようになりました。

個別の指導計画を、どう活かすか

この計画は、その時々の指導のためだけのものではありませんでした。

支援学級と普通級を行き来する転籍や、交流授業をどう組むかを考えるときに、判断の材料になります(支援学級に戻ることを選んだ日転籍と交流授業のしくみ)。

WISCのような検査の結果と合わせて見ると、子どもの得意・不得意が立体的に見えてきて、「だからこの手立てなのか」と腑に落ちることもありました。

難しく考えなくても、まずは「うちの子の計画はありますか」「見せてもらえますか」と聞いてみる。そこからで、十分だと思います。

おわりに

「個別の指導計画」も「個別の教育支援計画」も、名前だけ見ると、つい身構えてしまいます。でも中身は、その子のための設計図です。

あるはずのものが見えないときは、聞いてみる、お願いしてみる。それだけで、見えてくるものがあります。どこに相談すればいいか迷ったときのことは、別の記事にもまとめました(発達障害の子を持つ親、相談はどこへ)。就学から進路までの全体像は、こちらにまとめています(就学と進路、全体の地図)。


この記事について:この記事は、運営者(万樹)が発達障害のある子どもを育てるなかでの実体験と、自分なりに調べた内容をもとに書いています。制度の運用や支援の要否には地域差・個人差があります。具体的なご判断は、お住まいの自治体の窓口や専門機関にご確認ください。

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