「受給者証」と「療育手帳」は別物でした——申請前に整理しておきたい2つの制度

この記事を書こうと思ったきっかけ

療育施設に通わせることを勧められたとき、私は「療育手帳を取らなければいけないのか」と思い込んでいました。

療育手帳——その言葉を聞いた瞬間、頭の中でいくつかの疑問が浮かびました。どこで申請するの?検査が必要なの?うちの子、取れるの?

実際には、療育施設を利用するために必要なのは「療育手帳」ではなく「通所受給者証」でした。全くの別物です。

でも当時の私には、その区別がついていなかった。名前が似ているし、どちらも「障害に関係する何か」という印象しかなかったからです。

同じ混乱をしている保護者の方が必ずいると思って、この記事を書きます。

通所受給者証とは何か

正式名称は「障害児通所支援受給者証」といいます。

市区町村が発行する証明書で、児童発達支援や放課後等デイサービスといった療育サービスを利用するために必要なものです。

ポイントは2つあります。

1つ目。発行するのは市区町村です。
都道府県ではありません。住んでいる自治体の障害福祉課や子ども発達支援センターが窓口になります。

2つ目。診断が確定していなくても申請できます。
「うちの子、まだ診断がついていないから申請できないんじゃないか」と思っている方が多いのですが、確定診断は必須ではありません。医師の「支援が必要」という意見書があれば、申請を進められる自治体がほとんどです。

「発達が心配」という段階でも動ける制度です。

療育とは何か・どんな種類があるかについては、こちらも参考にしてください。
療育とは何か——対象・種類・受け方を、経験者が書きました

療育手帳とは何か

正式名称は「療育手帳」ですが、都道府県によって名称が異なります。東京都では「愛の手帳」と呼ばれています。

発行するのは都道府県、または政令指定都市です。受給者証とは発行主体が違います。

目的も違います。療育手帳は、知的障害の程度を公的に証明する手帳です。交通機関の割引、施設の利用料軽減、福祉サービスの申請など、さまざまな支援制度につながるためのものです。

ここで一つ、大事なことをはっきり書いておきます。

療育手帳の対象は「知的障害のある人」です。発達障害があっても、知的障害がなければ取得できません。

自閉症やADHDといった発達障害と、知的障害は、別の概念です。発達障害のある子どもが全員、療育手帳を取得できるわけではありません。このことを知らずに「なぜ取れないのか」と混乱した経験を持つ保護者の方も少なくありません。

2つの制度、何が違うのか

まず、横に並べて見てみましょう。

障害児通所支援受給者証療育手帳
発行主体市区町村都道府県・政令市
目的療育サービスの利用知的障害の程度の証明
対象発達に心配のある子ども(診断不要のケースも)知的障害のある人
申請先市区町村の障害福祉課・子ども発達支援課市区町村窓口 → 都道府県の判定機関
必要な検査医師の意見書(自治体による)知能検査+日常生活能力の評価

一言でまとめると——

受給者証は「療育サービスを使うためのもの」、療育手帳は「知的障害を証明するためのもの」。

名前は似ていますが、目的も、発行する機関も、対象も、すべて違います。

受給者証を申請するには

申請先は、住んでいる市区町村の窓口です。自治体によって「障害福祉課」「子ども発達支援課」「こども家庭センター」など名称が異なります。迷ったら「療育に通わせたい」と伝えれば、窓口を案内してもらえます。


申請に必要なのは「診断書」ではなく「意見書」

「受給者証の申請には診断書が必要」——私もそう思い込んでいました。でも、違います。

多くの自治体では、確定診断がなくても、医師の意見書があれば通所受給者証の申請ができます。

診断書と意見書は、別ものです。

診断書意見書
内容「この病名・障害がある」という確定証明「この支援が必要と考える」という専門家の推薦
前提確定診断が必要診断が確定していなくても書ける
法的効力強い行政判断の参考資料

受給者証の申請に必要なのは、多くの場合「意見書」です。「診断がまだついていないから申請できない」と思っていたとしたら、それは一度、窓口に確認してみてください。

ただし、必要書類は自治体によって異なります。「通所受給者証の申請に何が必要か」は、住んでいる市区町村の窓口に直接確認するのが確実です。


大切なのは「まず動いてみる」こと。

「何を持っていけばいいかわからない」という段階でも、窓口に相談するだけなら誰でもできます。申請後は審査があり、受給者証が発行されるまでに数週間から1か月程度かかる自治体が多いです。療育施設が決まりそうなタイミングで、早めに動いておくことをおすすめします。

どんな療育施設があるか迷っている方は、こちらも参考にしてください。
民間療育と公的療育の違い——費用・選び方・空きがない時の探し方まで

療育手帳を申請するには

申請は、まず住んでいる市区町村の窓口で受け付けてもらいます。その後、都道府県の判定機関(知的障害者更生相談所、または児童相談所)で判定を受ける流れになります。

判定では、知能検査(WISCなど)と日常生活能力の評価が行われます。IQについては「おおむね75前後を一つの目安とする」とされていることが多いですが、自治体や年齢によって異なります。また、IQの数値だけで判定されるわけではなく、日常生活全体の状況が総合的に判断されます。

申請したからといって、必ず取得できるわけではありません。判定の結果によっては取得できないこともあります。「取れなかった」という経験をお持ちの方も、決して少なくありません。

どちらか一方でいい?両方必要?

目的が違うので、状況によって異なります。

療育サービスを利用したいなら:受給者証が必要です。
児童発達支援や放課後等デイサービスといった公的な療育施設を利用するには、受給者証が原則として必要です。手帳がなくても、受給者証があれば通えます。

ただし、受給者証が不要なケースもあります。

場面受給者証
児童発達支援・放課後等デイサービス必要
民間の習い事型支援(自費)不要
保育園・幼稚園の加配支援不要
保育所等訪問支援必要(別の受給者証)

療育手帳については、「今すぐ必要かどうか」は個々の状況によります。次の章で、この点についてもう少し詳しく書きます。

子どもに療育手帳をどう説明するか

少し前、障害児相談支援員の方との定期面談に息子も同席しました。

その場で療育手帳の話が出たとき、息子がひとこと言いました。

「僕は馬鹿じゃない。」

語彙は多くない子です。それでも、その言葉はするりと出てきた。

そうか、と思いました。「療育手帳」という言葉が、子どもの耳には「馬鹿であることの証明書」に聞こえているんだと。

知的障害=馬鹿、という誤解は、大人の世界にもあります。ましてや子どもは、言葉をそのまま吸収します。どこかで拾ってきた悪口が、心の中に住みついていたのかもしれません。

でも、それは違います。

知的障害があるということは、「得意なことと苦手なことの幅が大きい」ということです。記憶や言語や処理の速さが、平均と異なる特性を持っているということです。それは「馬鹿」とは、まったく別の話です。


私が息子にした説明は、こんな感じです。

「困った時に、助けてもらいやすくなるカードだよ。」

目が見えにくい人が眼鏡を使うように。耳が聞こえにくい人が補聴器を使うように。人によって、必要なサポートは違う。療育手帳は、「このサポートが必要な人です」と伝えやすくしてくれる道具です。


一つ、親として知っておいてほしいことがあります。

療育手帳は、取得しても必ず使わなければいけないものではありません。

就職のときに出さなくてもいい。友達に見せなくてもいい。「持っている」という事実は、本人と家族だけが知っていればいい。

使いたいと思ったときに、使えばいい。

もし将来、障害者雇用枠で働きたいと思ったとき。交通機関や施設の割引を使いたいと思ったとき。福祉サービスに繋がりたいと思ったとき——そのときに「持っていてよかった」と思えるかもしれない。

転ばぬ先の杖、という言葉が、私にはしっくりきています。

取得しておくかどうかは、子どもの状況と家族の判断で決めればいい。ただ、「馬鹿だと思われるから嫌だ」という理由で判断を避けることだけは、しなくていいと私は思っています。

よくある誤解まとめ

最後に、よく聞く誤解を整理します。

療育に通うには療育手帳が必要
→ 必要なのは「通所受給者証」です。療育手帳がなくても、受給者証があれば公的な療育施設に通えます。

受給者証と療育手帳は同じもの
→ 発行主体も、目的も、対象も、まったく別の制度です。名前が似ているだけで、別物です。

発達障害があれば療育手帳がもらえる
→ 療育手帳は「知的障害」のある方を対象としています。発達障害があっても、知的障害がなければ取得できません。

診断がつかないと受給者証は申請できない
→ 確定診断は必須ではありません。「発達に心配がある」という段階でも、医師の意見書があれば申請できる自治体がほとんどです。まず窓口に相談してみてください。

手帳がないから支援が受けられない
→ 療育手帳がなくても、受給者証があれば支援につながれます。「手帳がないから諦める」必要はありません。


「名前が似ているから同じものだと思っていた」——私がそうだったように、最初から正確に理解している人の方が少ないと思います。

まず受給者証。それが療育サービスへの入り口です。

療育手帳については、子どもの状況と今後の選択肢を見ながら、ゆっくり考えていけばいい。

制度を知ることは、選択肢を増やすことです。知らないまま手放してしまう選択肢を、できるだけ減らしてほしいと思っています。

「療育を勧められたけど通えない」という方は、こちらも参考にしてください。
療育に通えない時の選択肢——行き渋り・空き待ち・地方在住の子への支援まとめ

申請に必要な書類の種類(診断書・意見書の違い)については、「診断書」と「意見書」は別物でした——療育・受給者証の申請前に知っておきたい2つの書類もあわせてご覧ください。

就労支援制度での手帳の使い道について詳しくは、発達障害のある子が使える就労支援制度——4種類の違い・手帳の要否・いつから動くかをご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました