子どもがまだ小学生のうちから、「将来、この子はどうやって働くんだろう」と考えたことはありませんか。
私はそう考えています。療育のこと、学校のこと——目の前の課題を一つひとつ乗り越えながらも、頭の片隅にはいつも「この先」があります。
発達障害のある子が社会に出るとき、使える支援制度がいくつかあります。知っていると選択肢が広がる。知らないまま、選択肢を見逃してしまうことも。
個人的に調べたことですので、必ず専門の方に確認してください。同じような境遇の方の「気になる」の解決の糸口になりますように。
① 就労支援制度、まず全体像を知る
「就労支援」と一口に言っても、制度はいくつかあります。まず全体像をつかんでおくと、あとの説明がわかりやすくなります。
主な制度は以下の4つです。
| 制度名 | 目的 | 対象の目安 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 就職することを目指す | 一般就労(※)を希望する方 |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結びながら働く | ある程度継続して働ける方 |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約なしで、自分のペースで働く | まず「働く」ことに慣れたい方 |
| 就労定着支援 | 就職後の定着をサポートする | 一般就労後の方 |
※「一般就労」とは、福祉サービスを介さずに一般の企業に就職することを指します。対して、就労移行支援・A型・B型のように障害福祉サービスを通じて働く形を「福祉的就労」と呼ぶことがあります。どちらが良い・悪いではなく、その人に合った働き方を選ぶための区分けです。
いずれも、基本的には高校を卒業してから(18歳以降)が入口になります。小学生の今、すぐ使えるものではありませんが、知っておくことで進路選択の視野が広がります。なお、制度上は15歳(中学卒業後)から利用できる場合もあります。
② 就労移行支援——「就職すること」を目指す訓練
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方が、就職に必要なスキルや生活習慣を身につけるための場所です。
パソコン操作・ビジネスマナー・体調管理・面接対策など、個人の状況に合わせたプログラムが組まれます。
利用期間と費用
利用期間は原則2年です。ただし必要性が認められた場合は最大1年の延長が可能で、合計最大3年まで利用できます。
費用については、世帯の収入状況によって異なりますが、受給者証があれば原則無料〜低額で利用できます。
手帳は必要?
就労移行支援の利用に、障害者手帳は必須ではありません。後の⑦節でもう少し詳しくお伝えします。
③ 就労継続支援A型——雇用契約ありで働く
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで働く形のサービスです。
一般就労と同じように雇用契約がある分、最低賃金が保証されます。週の就労時間は短めに設定されている場合が多く、障害のある方が無理なく継続して働けるように設計されています。
一般就労への橋渡しを目指す方だけでなく、「長くA型で働き続ける」という選択をされる方もいます。
④ 就労継続支援B型——雇用契約なしで働く
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、自分のペースで働く形のサービスです。
A型と比べると利用条件が緩やかで、体調や気力に波がある方も利用しやすいとされています。
工賃の現実
ただし、B型の工賃(賃金ではなく「工賃」と呼ばれます)は、全国平均で月額1〜2万円台と低いようですので、検討される方は確認してください。
障害年金と組み合わせる方が多い理由
月1〜2万円台という工賃を目にして、「これだけでは生活できない」と感じた方もいると思います。私もそう思いました。調べていく中で知ったのが、障害年金との組み合わせです。
B型を利用している方の中には、障害年金と組み合わせて生活費を構成している方もいるようです。
障害年金には1級と2級があります(障害基礎年金の場合)。
- 1級:月額約8.1万円——日常生活にほぼ介助が必要な状態
- 2級:月額約6.5万円——日常生活に著しい制限がある状態
B型の工賃と合わせることで、生活を成り立たせる仕組みになるようです。
障害年金を受け取るための条件
障害年金を受け取るには、主に3つの条件があります。①初めて医師の診察を受けた日(初診日)が特定できること、②一定の保険料を納めていること、③定められた障害等級に該当すること——の3点です。
発達障害の場合は幼少期に初診日があることが多く、「20歳前傷病」として申請すると②の保険料納付要件が問われません。ただしこの場合、所得が高いと支給が制限されることもあるようです。
でも、障害年金の申請・等級判定は複雑です。検討されている方は年金事務所・社会保険労務士・市区町村の障害福祉窓口・障害者就業・生活支援センターへ相談してください。
⑤ 就労定着支援——就職後に使える制度
「就職できた。でもそこからが大変だった」という声は、珍しくありません。
就労定着支援は、一般就労後に職場への定着を支援する制度です。就職後の生活リズム・職場でのコミュニケーション・体調管理など、働き続けるために必要なサポートを受けられます。
利用期間は最長3年。就職後6か月を経過したところから利用が始まります。「就職がゴールではない」という視点で使える制度です。
⑥ 障害者雇用枠・特例子会社という選択肢
一般就労の中にも、障害のある方向けの雇用枠があります。
障害者雇用枠は、障害者雇用促進法に基づき、企業が一定の割合で障害のある方を雇用する制度です。一般の求人と比べて、障害の特性への配慮を前提として採用されるため、長く働き続けやすい環境が整っている場合があります。
特例子会社は、大手企業などが障害のある方の雇用を目的に設立した子会社です。職場環境の配慮が手厚い傾向があります。
ただしこれらの制度を利用するには、障害者手帳が必要です。手帳の種類については次の節で整理します。
⑦ 手帳は必ず必要か——どの手帳が何に使えるか
ここが混乱しやすいところかもしれません。制度ごとに「必要なもの」が違います。
就労移行・継続支援に必要なのは「障害福祉サービス受給者証」
就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援の利用には、「障害福祉サービス受給者証」が必要です。
放課後等デイサービスを利用されている方はすでに「受給者証」を持っていると思いますが、あちらは「障害児通所支援受給者証」(18歳未満の子ども向け)です。就労支援で使う受給者証とは別のものです。18歳以降に改めて申請する手続きが必要になります。
この受給者証の取得に、障害者手帳は必須ではありません。手帳がなくても、医師の診断書等で申請できます。ただし自治体の審査があり、基準は地域によって異なります。手帳があると審査がスムーズになるケースが多いとも言われています。
障害者雇用枠には「3種類の手帳」のいずれかが必要
一方、障害者雇用枠を利用する場合は、以下の3種類の手帳のいずれかが必要です。
- 身体障害者手帳(肢体・視覚・聴覚など)
- 療育手帳(知的障害が対象)
- 精神障害者保健福祉手帳(発達障害はこちら)
発達障害の場合は「精神障害者保健福祉手帳」
発達障害のある方が取得できるのは、精神障害者保健福祉手帳です。
医師の診断書があれば申請できます。診断書と意見書の違いについては、こちらの記事もご参照ください。
→ 「診断書」と「意見書」は別物でした——療育・受給者証の申請前に知っておきたい2つの書類
精神障害者保健福祉手帳には1〜3級があります。
| 等級 | 状態の目安 | 障害者雇用枠 |
|---|---|---|
| 1級 | 日常生活がほぼできず、常時援助が必要 | 利用できる |
| 2級 | 日常生活に著しい制限がある | 利用できる |
| 3級 | 日常生活・社会生活に一定の制限がある | 利用できる |
障害者雇用枠については1〜3級すべてで利用できます。ただし、税制上の控除や各種割引など、等級によって受けられる支援の範囲が変わる部分もあります。詳細は窓口でご確認ください。
療育手帳との違い
「療育手帳ではダメなの?」と思われる方もいるかもしれません。
療育手帳は、知的障害のある方を対象にした手帳です。発達障害があっても、知的障害を伴わない場合は対象外になるケースがあります(自治体によって基準が異なります)。なお、療育手帳でも障害者雇用枠を利用できます。
受給者証と療育手帳の違いについては、こちらもあわせてご参照ください。
→ 「受給者証」と「療育手帳」は別物でした——申請前に整理しておきたい2つの制度
⑧ 親が動き始めるタイミング——小学生の今からできること
就労支援は、基本的に高校卒業後(18歳以降)が利用の入口です。今すぐ手続きできるものではありません。
特別支援学校の高等部には進路相談がある
特別支援学校の高等部では、就労を見据えた職業教育が充実しています。進路担当の先生に「将来の就労支援についても聞きたい」と伝えれば、情報を得やすくなります。
相談支援専門員に「将来の話」を早めにしておく
放課後等デイサービスや療育に関わっている相談支援専門員の方がいれば、就労支援についての見通しを一緒に確認しておくことができます。早期に関係性を築いておくと、将来の移行もスムーズになりやすいようです。
今は「知っておく」だけで十分
小学生のうちは、「こういう制度がある」と知っておくだけで十分だと思っています。
制度は変わることもありますし、子どもの成長によって使える選択肢も変わります。今から焦る必要はありません。ただ、「何も知らないまま18歳を迎えた」という状況だけは避けたいと思って、この記事を書きました。
まとめ
発達障害のある子が使える主な就労支援制度をまとめます。
| 制度 | 手帳の要否 | 特徴 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 不要(受給者証で可) | 就職を目指した訓練(最大3年) |
| 就労継続支援A型 | 不要(受給者証で可) | 雇用契約あり・最低賃金保証 |
| 就労継続支援B型 | 不要(受給者証で可) | 雇用契約なし・自分のペースで |
| 就労定着支援 | 不要(受給者証で可) | 就職後の定着サポート(最長3年) |
| 障害者雇用枠 | 必要(精神手帳など) | 配慮を前提とした雇用 |
「手帳がないと何も使えない」わけではありません。放課後等デイとは別の受給者証を取ることで、就労支援のほとんどは利用できます。
制度があると知っているだけで、進路の選択肢は広がります。少しでもお役に立てれば幸いです。


コメント