療育手帳の「5年ルール」は誤解だった——「判定」と「更新」は別物だと、児相で確認した話

放課後等デイサービスの面談を終えた、その帰り道のことでした。

私はそのまま児童相談所に立ち寄って、療育手帳の申請を、今回は見送りますとお伝えするつもりでいました。そのときに、ずっと頭の片隅にあったことを、ついでのように聞いてみたのです。

「療育手帳って、一度受けたら、次はしばらく受けられないんですよね?」

返ってきた答えは、私がそれまで思い込んでいたものとは、ずいぶん違っていました。

この記事は、専門家として制度を解説するものではありません。「数年は受けられないらしい」と信じ込んでいた一人の親が、自分で窓口に確認してみたら、聞いていた話と違っていた——ただ、それだけの話です。でも、もし同じように思い込んでいる方がいたら、私の経験が何かのきっかけになればと思って、書いておくことにしました。

※療育手帳の運用は、お住まいの自治体や年度によって異なります。この記事は2026年6月の時点で、私が自分の地域の窓口に確認した範囲のことです。正確なところは、お住まいの地域の児童相談所で確認してみてください。

児相の窓口で、聞いていた話と違った日

息子は小学6年生で、自閉症の診断を受けています。支援学級に在籍していて、療育手帳は持っていません。

中学の進路を考えるなかで、「療育手帳をどうするか」というのは、ずっと宿題のように私の中にありました。取るのか、取らないのか。取るとしたら、いつなのか。

そのとき私の頭にあったのが、「一度判定を受けたら、次は約5年後まで受けられない」という話でした。中学校の見学に行ったときにも、たしかそんなふうに説明された記憶があったのです。だから私は、「受けるなら一発勝負」「タイミングを間違えたら、次は何年も先」と、どこかで身構えていました。

ところが、児相の方の説明はこうでした。

「判定そのものは、毎年受けていただけますよ。ただ、一度受けると、そのあとしばらくは同じ検査を受けられない期間があります」

毎年? 私は思わず聞き返しました。「5年待たないといけない、というわけではないんですか?」

「それは、たぶん別のお話と混ざっていますね」

——その一言で、私の中でずっとこんがらがっていた糸が、少しずつほどけていきました。

「5年ルール」の正体——「判定」と「更新」は別のルールでした

家に帰って、自分でも調べ直してみて、ようやく腑に落ちました。私が「5年ルール」だと思い込んでいたものは、実は二つの別々のルールが、ひとつの言葉に混ざって伝わっていたのだと思います。

判定(新規・再申請)=検査の間隔をあければ、また受けられる

ひとつめは、これから手帳を取ろうとするときの「判定」のルールです。

療育手帳の判定では、心理検査を受けます。この同じ検査は、一定の間隔をあければ、また受けられるのだそうです。間隔があるのは、同じ検査を続けて受けると「慣れ」で結果が変わってしまうから、と説明を受けました。

私の住んでいる市町村の児相に確認した範囲では、その間隔は「最短でおおむね1年」でした。つまり、一度受けて結果が思うようにいかなくても、それより短くはできないけれど、おおよそ1年あければ、また挑戦できる——そういうことだったのです。

ここで気をつけたいのは、「1年経てば必ず受けられる」という意味ではない、ということ。あくまで「最低でも1年はあけてください」という最短ラインで、実際にいつ受けられるかは、児相の予約や判定の予定と相談しながら、ということになります。それでも、「一度受けたら数年ダメ」とはまったく違う話でした。

更新(取得した”後”の再判定)=こちらが「2〜5年」の出どころ

では、私が信じていた「5年」という数字は、どこから来たのか。

これは、手帳を取得した後の話だったようです。療育手帳は、一度交付されたら一生そのまま、というものではなく、しばらく経つと、もう一度状態を確認する「再判定」があります。その間隔が、だいたい2年から5年ごと。

つまり「5年」は、手帳を持っている人が、次の更新までにあく期間のこと。これから取ろうとしている人の「次に判定を受けられるまでの期間」とは、まったく別のものだったのです。

「判定」と「更新」。言葉にすると当たり前のようですが、窓口でふわっと「だいたい5年くらい」と聞くと、その二つは簡単に混ざってしまう。少なくとも、私はすっかり混ざっていました。

なぜ、私はずっと混ざったまま信じていたのか

中学の進路を考え始めた頃から、私はずっと「一度受けたら次は約5年後」だと理解していました。でも今振り返ると、それは私自身が、二つの話を取り違えていただけなのかもしれません。

制度の話はこみ入っていて、一度どこかで耳にしたくらいでは、正確に受け取るのはなかなかむずかしいものです。私自身、記憶や思い込みに頼ったまま、自分で確かめずにいたことで、いつのまにか「次は5年後」が事実のようになっていました。

今回、たまたま児相の窓口で聞き直したのは、本当に偶然でした。聞かなければ、たぶん私は今も、そう信じたままだったと思います。

「一度受けたら数年は無理」という思い込みが、いちばんの落とし穴

振り返って、いちばん怖いと感じたのは、制度そのものよりも、思い込みのほうが自分の選択肢を狭めていたということでした。

「一度受けたら数年は受けられない」と思っていると、人はどう動くか。

ひとつは、「次がないなら、絶対にここで取らなきゃ」と身構えてしまう。一発勝負のように力が入って、タイミングを計りすぎて動けなくなる。

もうひとつは、逆に「どうせ次は5年後でしょう」と、最初から諦めてしまう。「今じゃないし、当分先の話だ」と、考えること自体を先送りにしてしまう。

私は、どちらかというと後者でした。「まだ先の話」と思って、ずっと宿題を棚の上に置いていたのです。でも本当は、もっと身近に、もっと柔軟に考えてよい話だった。知らないというだけで、自分で自分の選択肢を小さくしていたのだな、と思いました。

受けやすさと、受かりやすさは、別の話

ここでひとつ、正直に書いておきたいことがあります。

「また受けられる」と知って、私は少し肩の力が抜けました。でも、「受けやすい」ことと「受かりやすい」ことは、別の話です。

療育手帳の判定には基準があって、知的な面での状態が一定のラインにあるかどうかを見られます。うちの子の場合は、検査の数値の上では、今はそのラインから外れています。

ここ数ヶ月で、私の中に少しずつ生まれてきた見方があります。この検査は、同じ年ごろの子と比べてどうか、という形で数値を出すのだそうです。つまり、「うちの子がどれだけ伸びたか」そのものではなく、「同じ年の子と比べて、どのあたりにいるか」で決まる。

そして、学年が上がるほど、勉強も生活も、求められることの「抽象度」が上がっていきます。目に見える具体的なものから、頭の中で考える段取りや、見えない約束ごとへ。この抽象度が上がる場面で、ゆっくり伸びていくタイプの子は、まわりのスパートに追いつくのが少しずつ大変になり、同じ年の子との差が、かえって開いて見えてくることがあるのだと知りました。

だから、不思議なのですが、今は数値の上で「外れている」子でも、年齢が上がるにつれて見え方が変わってくることもある。今はこうでも、この先はわからない。これは、ここ最近になってようやく、私の中に芽生えてきた感覚です。

そう考えると、「いつでも挑戦できる」ことと「取得できる」ことは、分けて考えないといけません。何度でも受けられると分かったからといって、受ければ取れる、というわけではない。そこは冷静でいようと、自分に言い聞かせています。

ただ、これはあくまでうちの子の、今この時点での話です。判定の基準も、お子さんの状態も、一人ひとり違います。同じように迷っている方は、ご自身のお子さんのこととして、窓口で相談してみてくださいね。

わが家が小6の今回、「辞退」を選んだ理由

そんなことを確認したうえで、私は今回、小6でのタイミングでの申請は見送ることにしました。

これは「諦めた」のとは少し違います。むしろ逆で、正確に知ったうえで、今ではないと判断した、という感覚に近いです。

息子は今、放課後等デイサービスでも「成長しましたね」と言ってもらえるくらい、落ち着いています。今のこの状態で、無理にタイミングを合わせる必要はない。そして何より、「また挑戦できる」と分かった以上、今ここで決めきらなくてもいい。そう思えたことが、見送るという選択を、ずいぶん楽にしてくれました。

療育手帳という選択肢を、私は手放したわけではありません。転ばぬ先の杖を用意しておくのは、親にできる準備のひとつだと思っています。ただ、その杖を「いつ手に取るか」は、正しく知ったうえで、自分たちのペースで選んでいきたい。今はそう考えています。

中学に上がってからの進路全体の話は、就学と進路の全体をまとめた記事に書いていますので、よければそちらも読んでみてください。療育手帳そのものについては、受給者証との違いを整理した記事や、手帳で受けられる手当や助成をまとめた記事もあります。

自分の地域の児童相談所で、確認してほしい

最後に、これだけはお伝えしておきたいことがあります。

ここまで書いてきたことは、あくまで私が、自分の住んでいる市町村の窓口で聞いた範囲の話です。療育手帳の運用は、自治体によってかなり違うと聞きます。再判定の間隔も、判定のあけ方も、地域や年度で変わることがあるそうです。

だから、もしあなたが今、「一度受けたら数年は受けられないらしい」と思って身構えているなら、どうか一度、お住まいの地域の児童相談所に、直接聞いてみてください。人づてに聞いた話と、窓口で聞く話は、案外違うことがあります。私がそうだったように。

確かめるのは、ほんの少し勇気がいります。でも、確かめてみて初めて、私は「ああ、そんなに身構えなくてよかったんだ」と思えました。

おわりに

「一度受けたら、次は5年後」。

私はその一言を、ずっと事実だと思って抱えていました。でも、自分で聞いてみたら、それは「判定」と「更新」という別々の話が、混ざって伝わっていただけでした。

制度の話はむずかしくて、誰かに聞いた一言を、つい鵜呑みにしてしまいます。私もそうでした。だからこそ、もし気になっていることがあるなら、自分の言葉で、窓口に聞いてみる。それだけで、見えている景色が少し変わることがあるのだと、今回あらためて思いました。

同じように、どこかで聞いた話を抱えて、なんとなく身構えている方がいたら。この記事が、確かめてみる小さなきっかけになれば、うれしいです。


この記事について:この記事は、運営者(万樹)が発達障害のある子どもを育てるなかでの実体験と、自分なりに調べた内容をもとに書いています。制度の運用や支援の要否には地域差・個人差があります。具体的なご判断は、お住まいの自治体の窓口や専門機関にご確認ください。

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